束の定義

代数的定義

$L$ を集合, $j, m$ を $L\times L$ から $L$ への写像とする. $\mathcal{L} = (L, j, m)$ が下記の公理を満たすとき, $\mathcal{L}$ はであると言う.

$j$ を結び, $m$ を交わりと言う. 通常 $j(x, y) = x\cup y, m(x, y) = x\cap y$ と書く1ので, 上記の公理は

と書ける.

命題1

冪等律 $x\cup x = x, x\cap x = x$ が成り立つ.

(証明)

$x\cup x = x$ は吸収律 $x\cup(x\cap y) = x$ において $y\mapsto x\cup y$ とするともう一方の吸収律により示される. $x\cap x = x$ も同様である.

(証明終)

束における順序

束 $\mathcal{L} = (L, \cup, \cap)$ において $$x\le y \stackrel{\mathrm{def}}{\Longleftrightarrow} x\cup y = y$$ と定義すると $(L, \le)$ は順序集合となる. 実際, 反射律, 反対称律は明らかで, 推移律については $x\le y, y\le z$ ならば $$\begin{align} x\cup z &= x\cup(y\cup z) \\ &= (x\cup y)\cup z \\ &= y\cup z = z \end{align}$$ だから $x\le z.$

なお $$\begin{align} x\cup y = y &\Rightarrow x\cap y = x\cap(x\cup y) = x, \\ x\cap y = x &\Rightarrow x\cup y = (x\cap y)\cup y = y \end{align}$$ なので $$x\le y \stackrel{\mathrm{def}}{\Longleftrightarrow} x\cap y = x$$ と定義しても同じである.

命題2

束 $\mathcal{L} = (L, \cup, \cap)$ を順序集合とみなすとき, 任意の二元に上限と下限が存在し, $$\sup\{x, y\} = x\cup y, \inf\{x, y\} = x\cap y$$ が成り立つ.

(証明)

明らかに $$x\le x\cup y, y\le x\cup y$$ が成り立つ. $x\le z, y\le z$ ならば $$\begin{align} (x\cup y)\cup z &= x\cup(y\cup z) \\ &= x\cup z = z \end{align}$$ だから $x\cup y\le z,$ 故に $x\cup y = \sup\{x, y\}.$

下限についても同様である. (証明終)

順序集合における束演算

順序集合 $\mathcal{L} = (L, \le)$ において, 任意の二元に上限および下限が存在するとする. このとき $$x\cup y\ := \sup\{x, y\}, x\cap y := \inf\{x, y\}$$ と定義すれば $(L, \cup, \cap)$ は束となることがわかる. かつ, この束演算によって決まる $L$ 上の順序は元の順序に一致する.

このことから, 束は「任意の二元に上限と下限が存在する順序集合」と同一視できる.

圏論からの補足

順序集合はそれ自体を小さな圏とみなすことができる. このとき, 順序集合が束であることは, それを圏とみなしたとき, 任意の二つの対象の積と余積が存在することと言い換えられる. 積が交わりで余積が結びである.

  1. 集合算の記号を用いているのは, 束における結びと交わりが集合算における集合和と交わりに類似する性質を持つためである.

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