函手について

函手

以下, 圏を $C, D, \dots$ で表し, 圏 $C$ の射の集まりを $\mathcal{M}(C)$ のように表すこととする.

$F$ が圏 $C$ から圏 $D$ への函手であるとは, 以下の公理を満たす写像 $F \colon \mathcal{M}(C) \to \mathcal{M}(D)$ である.

公理 1

$F$ は対象を対象に移す. すなわち $a \in \mathcal{O}(C) \Longrightarrow F(a) \in \mathcal{O}(D)$.

公理 2

$f \circ g$ が定義されるとき $F(f) \circ F(g)$ が定義され, $F(f \circ g)$ に等しい.

命題 0.4

$F(s(f)) = s(F(f)), F(t(f)) = t(F(f))$.

(証明)

$F(f) = F(f \circ s(f)) = F(f) \circ F(s(f))$ から $F(s(f)) = s(F(f))$. もう一方も同様.

命題 0.4 により, $f : a \to b$ は函手 $F$ によって $F(f) : F(a) \to F(b)$ に移される. $F$ が圏 $C$ から圏 $D$ への函手であることを $F \colon C \to D$ と書く.

特殊な圏と函手との関係

ただ一つの恒等射(同時に対象でもある)のみからなる圏を $\mathbf{1}$ で表す($\mathbf{1}$ は全ての圏からなる(メタ)圏における終対象(後述)であるため, まれに「終圏」と表記する文献がある). 異なる二つの恒等射 $0, 1$ と, 恒等射でないただ一つの射 $0 \to 1$ を持つ圏を $\mathbf{2}$ で表す. さらに, $\{0 \to 1 \to 2\}$ なる圏を $\mathbf{3}$ と表す.

命題 0.5

圏 $C$ の対象は函手 $\mathbf{1} \to C$ と, 射は函手 $\mathbf{2} \to C$ と同一視できる. 函手 $\mathbf{3} \to C$ は合成可能射およびその合成と同一視できる.

(証明)

省略.

函手の合成

二つの函手 $F \colon C \to D$ と $G \colon D \to E$ の合成 $G \circ F \colon C \to E$ とは, 写像としての合成 $G \circ F \colon \mathcal{M}(C) \to \mathcal{M}(E)$ のことである. このことは, 「全ての圏と函手からなる(メタ)圏」を考えることができることを示唆する.

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